
今回の記事では《「クロールができない」小学生への教え方|泳げない子も安心のステップ指導法》について紹介させて頂きます。
- ① はじめに
- ② 泳げない子が不安に感じるポイント
- ③ クロール指導の基本ステップ
- ④ よくあるつまずきと対応のコツ
- ⑤ 安全面・教師や保護者の配慮
- ⑥ 指導に役立つ便利アイテム・補助用具
- ⑦ まとめ
① はじめに
小学校の水泳授業が始まる季節になると、多くの教師や保護者から聞こえてくるのが「うちの子、クロールができないみたいで……」という声です。実際、近年ではクロールを正しく泳げる子どもの割合が減少傾向にあるとも言われています。
その背景には、以下のような要因が挙げられます。
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学校外での水泳経験が少なくなっている
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習い事の格差が広がっている(スクール経験の有無)
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運動量の減少により、体の使い方に自信がない
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コロナ禍で水泳指導の空白期間があった
こうした中、「周りの子は泳げているのに、自分だけできない……」という思いから水が苦手=水泳嫌いになってしまう子も珍しくありません。
しかし、どんな子でも最初は泳げなかったはず。クロールが苦手な子にこそ、「できた!」の成功体験を届けたい。本記事では、そうした思いを持つ教師や保護者に向けて、泳げない子でも安心して取り組めるクロールの段階的な指導法を紹介します。
「水に顔をつけるのも怖い」子でも大丈夫。水慣れから少しずつ自信を積み重ね、自然とクロールへとつなげていく指導ステップを、実際の現場で使える形でお伝えします。
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② 泳げない子が不安に感じるポイント

水泳の授業で「クロールができない」と感じる子には、共通した不安ポイントがいくつかあります。ここでは、教師や保護者が理解しておきたい主なつまずきについてまとめます。
● 顔を水につけるのが怖い
「水が顔にかかるとパニックになる」「目をつぶると不安で何もできない」――。
泳げない子の多くは、まずこの**“顔つけ”の段階でつまずいている**ことが多いです。水への恐怖心が強いと、体がこわばり、浮かぶ感覚すらつかみにくくなってしまいます。
特に低学年の子どもや、水泳経験が少ない子には、いきなりクロールの練習を始めず、水と仲良くなる遊びの要素を入れながら顔つけのステップを丁寧に進めることが大切です。
● 息継ぎがうまくできない
「泳げるけど、息継ぎのときに水を飲んじゃう」
「タイミングが合わなくて苦しくなる」
息継ぎがうまくいかない子は、手足の動きと呼吸のタイミングがズレやすく、結果的に泳げないと感じてしまいます。また、苦しくなることで焦り、水を飲んでしまうと、ますます不安が強まります。
息継ぎはクロールの中でも難しい技術の一つなので、いきなり通し練習ではなく、呼吸だけに集中した練習を取り入れることが有効です。
● 手足をうまく動かせない(力みすぎ・タイミングが合わない)
「バタ足が水を叩くだけで前に進まない」
「腕の動きがバラバラで、体が沈んでしまう」
泳ぎの動作は、見た目以上に**“全身の協調運動”**が必要です。しかし泳げない子は、手足の動きを「どう動かすか」よりも「とにかく動かさなきゃ」と焦ってしまい、力みすぎたり、水中でタイミングが合わなくなったりしがちです。
まずは**一つずつ動作を分解して教える(例:バタ足だけ、腕だけ)**ことが、正しいフォーム習得の第一歩になります。
● 周りと比べて自信をなくす
クラスの中に泳げる子が多いと、泳げない子は「どうせ自分はできない」と思い込んでしまいがちです。「見られるのが恥ずかしい」「できないのを知られたくない」と感じることで、やる気や挑戦意欲が下がってしまうこともあります。
そんなときこそ、教師や保護者の「できたね!」「さっきより進んだね!」という小さな成功体験を認める声かけが、子どもにとって大きな支えになります。
③ クロール指導の基本ステップ

ここからは、泳げない小学生でも無理なくクロールの基本が身につく7つのステップを紹介します。すべての段階で、**「ねらい・やり方・時間の目安・声かけ例・注意点」**を意識しながら進めてください。
ステップ1:水慣れ(顔つけ・浮く感覚)
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ねらい:水に対する恐怖をなくし、浮く感覚をつかむ
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やり方:
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顔に水をかける、手ですくって水をかぶる
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浅いプールで壁を持ちつつ顔をつける
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水中で「ブクブクパー」と声を出す呼吸遊び
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うつぶせ浮き、背浮きに挑戦
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時間の目安:1回15〜20分 × 2〜3回程度
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声かけ例:「水と仲良くなる練習をしようね」「目を閉じても、すぐに上がれば大丈夫」
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注意点:
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強制しない
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泣きそうな場合は無理に進めず、水遊びだけでもOK
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顔をつけられたら大きく褒める!
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ステップ2:バタ足の練習(ビート板あり・なし)
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ねらい:足の使い方に慣れ、浮力と推進力を感じる
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やり方:
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ビート板を持って、壁を蹴ってバタ足で進む
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ビート板なしでうつ伏せ姿勢を保ちながらバタ足
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深さに応じて補助具を活用(浮き棒など)
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時間の目安:1回15〜20分 × 2〜4回
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声かけ例:「足はまっすぐ、力を入れすぎずに小さく動かしてみよう」「お水をぴしゃぴしゃ蹴ってね」
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注意点:
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足を曲げて蹴っている場合は「足首の力を抜いてみて」など補足
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水しぶきの高さで進み具合が分かることを伝えると理解しやすい
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ステップ3:腕の動きの練習(陸上+水中)
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ねらい:クロールの腕の軌道(かき方)を理解する
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やり方:
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陸上で片手ずつ腕を回す練習
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水中で壁につかまりながら片手ずつ腕を回す
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鏡や動画でフォームを見ながら練習すると効果的
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時間の目安:1回10〜15分 × 数回
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声かけ例:「水を大きなスプーンですくうように動かそう」「前から後ろにまっすぐだよ」
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注意点:
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「手を入れる位置」と「かく方向」を分けて丁寧に伝える
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力みすぎて肩をすくめる子には、「リラックスしてやってごらん」と促す
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ステップ4:呼吸の練習(ブクブク・パッ)

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ねらい:呼吸のタイミングを習得し、水を怖がらないようにする
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やり方:
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水中で鼻からブクブク、顔を上げて口からパッ
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息を吐ききってから顔を上げるリズムを意識
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ビート板で浮かびながら呼吸練習も効果的
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時間の目安:1回10〜15分 × 2〜3回
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声かけ例:「ブクブク〜…パッ!っていうリズムをつくってみよう」「息は苦しくなる前に吐いてね」
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注意点:
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焦って顔を上げる子には「余裕を持って出す・吸う」を体感させる
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水を飲んでしまったときは「誰でも最初はそうだよ」と安心させる
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ステップ5:手足のタイミング練習(クロールに近づける)
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ねらい:バタ足と腕の動きを組み合わせ、クロールの形に近づける
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やり方:
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まずはビート板を使って、片手クロール+バタ足の練習
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次にビート板なしで、片手ずつクロール動作を行う
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息継ぎなしで「動きの流れ」だけを繰り返す
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時間の目安:1回20分 × 数回
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声かけ例:「バタ足と腕、いっしょにやってみよう」「手が前に行ったら、足も元気よくキック!」
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注意点:
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腕ばかり意識して足が止まらないように「足は止めないで」と声かけ
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水の中でのタイミング確認が難しい場合は、陸上で再確認を
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ステップ6:部分練習(息継ぎなしで5mなど)
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ねらい:息継ぎなしで短距離を「泳げた!」という成功体験を作る
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やり方:
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息継ぎなしのクロール動作で、5mや7mなど短い距離を泳がせる
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子どもによっては3mから始めてもよい
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繰り返すうちに、安定感がついてくる
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時間の目安:1回20〜30分
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声かけ例:「5mまで泳げたらすごいよ!」「ゴールしたらすぐに立っていいよ」
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注意点:
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無理に距離をのばさない
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息が苦しくなる前に止められるように「しんどくなったら止まってOK」を徹底
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ステップ7:通しでのクロール練習(短距離でOK)

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ねらい:クロールを一通りできる実感を得る
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やり方:
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息継ぎも含めてクロールを完成させる練習へ
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最初は7m〜10mほどの短い距離でOK
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必要に応じてビート板を使った片手クロールでも可
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時間の目安:1回20分 × 複数回
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声かけ例:「今日のチャレンジは10m!」「息継ぎはあごを少しだけ出す感じだよ」
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注意点:
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息継ぎのたびに顔を上げすぎる子は「片目と口だけ出してみよう」と伝える
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できたときは、周囲の子も一緒に拍手を!
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④ よくあるつまずきと対応のコツ

泳げない子の指導では、「よくある壁」に気づき、適切に対応することが大切です。
顔を水につけたくない子への声かけ
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問題点:最初の一歩が踏み出せず、進めない
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対応法:
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水をすくって顔にかけるなど、ステップを細かく刻む
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「今日は手をつけてみるだけでもいいよ」
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「鼻からブクブクできたら合格」と目標を下げる
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バタ足で沈んでしまう子の補助法
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問題点:足を強く蹴りすぎて体が沈む・浮かない
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対応法:
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ビート板の持ち方を見直す(下すぎると沈む)
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足の力を抜いて「小さく、リズムよく」と声かけ
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浮力補助具(浮きベルトなど)を活用
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息継ぎで水を飲んでしまう子へのステップダウン法
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問題点:息継ぎのときに水を飲んでパニックになる
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対応法:
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息継ぎなしの短距離練習に戻す
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陸上で呼吸の動きを確認してから再挑戦
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「顔を出しすぎる=あごが上がる」ことを避けるよう意識づけ
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できない子を置き去りにしない雰囲気づくり
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問題点:周囲と比べて自信を失い、消極的に
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対応法:
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成功体験を小さく積ませる(例:1秒浮けた!)
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「〇〇ちゃん、今日は顔つけできたね」と全体で共有
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努力を見逃さず、できた部分をピックアップしてほめる
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⑤ 安全面・教師や保護者の配慮

泳げない子への指導では、安全面の確保と心理的な安心感の両方が欠かせません。
バディ制や見守り体制の大切さ
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指導中の基本は「一人にしない」こと。
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バディ(ペア)制で、常に誰かが見ている状態を作る。
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監視役の先生・指導者が「泳ぎの進度」と「様子(表情・疲れ具合)」をこまめにチェック。
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保護者ボランティアや補助教員の協力を得るのも効果的。
「できる・できない」で優劣をつけない空気づくり
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水泳は進度に差が出やすいため、比較意識が生まれやすい教科。
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「昨日より今日がちょっと進んだね」と、他者との比較でなく、過去の自分との成長を認める声かけが重要。
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上達の早い子には「できない子へのお手本・サポーター役」として協力を求めると、優劣感を和らげられる。
できる子どもをモデルにして学び合いを促す工夫
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上手に泳げる子の動きを他の子にも見せることで、イメージを明確に。
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「〇〇くんの手の動き、見てごらん」「〇〇ちゃんのバタ足、すごく静かで上手だね」と、具体的なポイントを伝える。
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教え合い・応援し合う空気づくりで、教室全体の雰囲気が前向きになる。
焦らせない・失敗を責めない関わり
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「できない→叱られる」という印象を持たせると、水に対する恐怖心が強まってしまう。
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失敗しても「やってみたことがすごいよ」「チャレンジしたね」と肯定的に受け止める。
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教師や保護者が失敗を恐れない姿勢を見せることで、子どもたちの安心感が増す。
⑥ 指導に役立つ便利アイテム・補助用具

クロール習得の手助けとなる補助グッズは、特に初心者指導で有効です。
ビート板・浮き棒
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定番の補助具。特にビート板はバタ足練習や片手クロール練習に活用。
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細長い**浮き棒(ヌードル型)**は、腕にかけたり体に巻いたりして、浮く感覚を身につけやすい。
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子どもが安心して練習に取り組めるポイントにも。
浮き付きゴーグル
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ゴーグルの上部に小さな浮力材がついたタイプ。
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水中での顔の向きが安定しやすく、呼吸動作を習得しやすくなる。
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特に息継ぎに苦手意識がある子には効果的。
足を補助する浮きベルト
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腰や太ももに装着して、沈みやすい足を浮かせる補助具。
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バタ足時に体勢が崩れやすい子におすすめ。
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負荷の調整が可能なものもあるため、段階的にレベルアップしやすい。
記録カードやステップ達成表
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クロール習得を段階ごとに可視化して記録できるカードや表。
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「できた!」を目に見える形で確認することで、モチベーションが維持できる。
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担任の先生や保護者と連携しやすく、子ども自身の成長実感にもつながる。
⑦ まとめ

小学生の水泳授業で「クロールができない」子への指導は、成功体験を積ませることが最も重要です。泳げるようになる子と、なかなか前に進めない子とでは、進度に大きな差が出ることもありますが、それは当たり前のこと。大切なのは、その子なりの小さな「できた!」を見逃さずに、丁寧に拾い上げることです。
本記事でご紹介したように、クロールの習得にはいくつかの段階があり、すべての子が最初から一気にできるわけではありません。
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顔を水につけることが怖い
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手足の動かし方が分からない
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息継ぎで失敗して水を飲んでしまう
こうした悩みを抱える子には、段階的なステップを踏みながら、「水と仲良くなる」ことをゴールに設定していくことが大切です。
また、指導者の声かけ一つで、子どもの意欲は大きく変わります。
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「昨日よりちょっと進んだね」
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「やってみようとしていたのが素晴らしいよ」
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「水って気持ちいいね。いっしょにやってみよう」
こうした肯定的な言葉が、泳げない子の自信を支える土台になります。
指導のポイントをまとめると…
🏊 指導のポイントまとめ
-
小さな成功体験を大切にする
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焦らずステップごとに指導する
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過去の自分との比較で成長を実感させる
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安心・安全な見守り体制を整える
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楽しさや心地よさを共有しながら進める
水泳指導は、「泳げるようになること」そのものよりも、「水に対する恐怖心を減らす」「自分の身体を思い通りに動かす感覚を育てる」など、非認知的な学びの宝庫です。
泳げなかった子が、ある日ふと5メートル進めたときの笑顔は、何よりもかけがえのない瞬間です。
ぜひ、子どもたちのペースに寄り添いながら、楽しい水泳指導を進めてくださいね。
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