
こんにちは。晴田そわかです。
今回の記事では《【小学生高学年向け】建国記念の日の指導案3選|「神話」と「歴史」を区別して教える》について紹介させて頂きます。
はじめに
小学校高学年(5年生・6年生)になると、歴史の授業が始まり、子どもたちの物事を見る目はぐっと大人びてきます。
低学年の頃のように、「日本のお誕生日だよ! おめでとう!」という情緒的な説明だけでは、「先生、それって本当なの?」「誰が決めたの?」「2月11日に何があったの?」と、鋭い質問が飛んでくることも少なくありません。
特に「建国記念の日」は、アメリカの独立記念日のような「明確な史実としての日付」とは異なり、神話(物語)を由来としています。この「曖昧さ」こそが、高学年の知的好奇心を刺激する絶好の教材になるのです。
この記事では、「神話(物語)」と「歴史(事実)」を明確に区別しつつ、その両方を尊重する視点を育てるための、高学年向け指導案を3つご紹介します。
社会科の授業や、朝の会、帰りの会でのショートスピーチなど、場面に合わせて活用できる45分授業構成の台本付きです。
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高学年指導の肝は「神話」と「歴史」の境界線

指導案に入る前に、先生や保護者の方が持っておくべき「高学年への伝え方のスタンス」を共有します。ここがブレると、子どもたちは混乱してしまいます。
1. 「嘘」ではなく「文化」として扱う
高学年の子どもたちは、「サンタクロースは本当にいるのか?」という疑問を通り過ぎ、現実的な思考を持っています。そのため、神武天皇の即位などの神話を「事実」として押し付けると、「そんなの嘘だ」と反発心を持つことがあります。かといって、「全部作り話だ」と切り捨てるのも、自国の文化を否定することになりかねません。
ポイントは、**「史実かどうかは分からないけれど、昔の人たちが大切にしてきた『物語(文化)』である」**というスタンスです。 「ギリシャ神話と同じように、日本にも国の始まりを伝える壮大なストーリーがあるんだよ」と伝えることで、歴史へのロマンを感じさせることができます。
2. 「世界」との比較で客観視させる
日本の中だけで考えていると、「なぜ日付がはっきりしないのか」が特殊に見えますが、世界に目を向けると、国の成り立ちは千差万別です。 他国と比較することで、**「日本は現存する世界最古級の国である」**という事実(これはギネス記録などの客観的データです)に気づかせ、そこから自然な愛国心や自己肯定感を引き出します。
【実践】思考力を鍛える!建国記念の日の指導案3選
ここからは、実際に教室で行える3つの授業案をご紹介します。 「調べる」「考える」「議論する」という、高学年らしい活動を取り入れています。
【授業案1:調査・比較】世界の「建国記念日」と日本を比べよう(社会・総合)

インターネットや図書室を使って、世界の国々の「誕生日事情」を調べ、日本の特殊性を浮き彫りにする探究学習です。
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ねらい: 他国の建国の由来(革命、独立など)と比較することで、日本の建国の特徴(神話由来・万世一系)を客観的に理解する。
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準備物: タブレット端末(または地図帳、歴史資料集)、世界地図、ワークシート、模造紙
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対象: 小学5年生・6年生
指導案の流れ(45分)
1. 導入(5分):国にも誕生日がある? 身近な問いかけからスタートします。
先生:「もうすぐ2月11日、建国記念の日ですね。みんなは自分の誕生日は知ってるよね? 何月何日何時何分に生まれたか、母子手帳を見れば正確に分かります」 先生:「じゃあ、国はどうだろう? アメリカやフランス、中国といった国々の誕生日は、いつで、どんな理由で決まったのか、予想できるかな?」
2. 展開(15分):世界の建国記念日リサーチ グループごとに担当の国を決め、タブレット等で調べ学習を行います。 (例:アメリカ班、フランス班、中国班、韓国班、日本班)
先生:「アメリカ班、どうでしたか?」 児童(アメリカ班):「7月4日です。独立宣言をした日だと書いてあります」 先生:「そうだね。イギリスから独立して『新しい国を作るぞ!』と宣言した、歴史的な証拠が残っている日だね」 児童(フランス班):「7月14日です。革命が起きて、バスティーユ牢獄が襲撃された日です」 先生:「ありがとう。王様を倒して、国民の国を作った日だね。これも歴史の教科書に出てくる明確な事件だ」
3. 【主活動】(20分):「日本だけ『神話』!? 比較発表会」 ここで「日本班」の発表を通じて、教室に「?」を生み出します。
先生:「では、日本班。日本の誕生日はいつで、何があった日ですか?」 児童(日本班):「えっと…2月11日なんですが、本には『神武天皇が即位した日』って書いてあります。でも、『紀元前660年』って書いてあって、そんな昔の記録あるのかな…?」 先生:「鋭いね。紀元前660年というと、縄文時代や弥生時代の頃だ。そんな大昔の正確なカレンダーなんて残っていると思う?」 児童:「ないと思う!」 先生:「そう。実は日本だけ、**『いつできたか、はっきりとした証拠がない』**んです。それくらい昔から、ずっと続いている国なんだよ」 先生:「他の国は、戦争や革命で一度国がなくなったり、新しくなったりしているけれど、日本はずーっと『日本』のまま。これをどう思う?」
ここで、「独立記念日がない=他国に支配されて消滅したことがない」というポジティブな側面(奇跡的な歴史の連続性)に気づかせます。
4. まとめ(5分):世界一長い歴史 調査結果をまとめます。
先生:「日本には、アメリカのような『建国の契約書』はありません。その代わり、神話の時代から続く長い長い歴史があります。世界で一番長く続いている国として、ギネスブックにも載っているんだよ」 先生:「『いつできたか分からないくらい古い』。これが日本のすごいところなんだね」
【授業案2:歴史考察】初代天皇「神武天皇」は実在したのか?(社会)

歴史の授業で習う「事実」と、古事記などに書かれている「物語」の境界線を探る、知的なミステリー授業です。
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準備物: 神武東征の地図資料、歴史年表、ホワイトボード
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対象: 小学6年生(歴史学習開始後が望ましい)
指導案の流れ(45分)
1. 導入(5分):教科書の最初の人 歴史の教科書を開かせます。
先生:「歴史の教科書で、一番最初に出てくる人物は誰かな? 卑弥呼? 聖徳太子? 実はもっと前に、名前だけ出てくる人がいます」 児童:「神武天皇?」 先生:「そう。初代天皇と言われている人です。今日は、この人が『本当にいたのか?』をみんなで考えてみよう」
2. 展開(10分):神武東征のストーリー 神話を「物語」として紹介します。ここで「八咫烏(ヤタガラス)」などのファンタジー要素を出すことで、子どもたちの興味を惹きます。
先生:「伝説によると、神武天皇は今の宮崎県(日向)から出発して、奈良県(大和)まで旅をして日本を平定したと言われています。これを『神武東征(じんむとうせい)』と言います」 先生:「途中、道に迷った時には、3本足のカラス『八咫烏』が空から道案内をしてくれたんだって。サッカー日本代表のマークにもなってるよね」
3. 【主活動】(25分):「歴史ミステリー:神話と事実の境界線」 クラスを「実在派」と「物語派(非実在派)」に分けて(または個人の意見として)、討論させます。
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問い: 「神武天皇は実在した人間だと思う? それとも、誰かが作った物語の登場人物だと思う?」
児童A(実在派):「お墓(御陵)があるし、子孫の天皇がいまも続いているから、モデルになった人はいると思う」 児童B(物語派):「カラスが道案内するとか、120歳以上生きたとか、ありえないから物語だと思う」 先生:「いい意見だね。今の歴史学では、神武天皇は『神話上の人物』とされることが多いです。でも、『大和朝廷(ヤマト王権)』という大きなグループが奈良にできたことは、遺跡からも証明されている事実です」 先生:「では、なぜ昔の人たちは、こんな不思議な物語を作ったんだろう? ただの嘘をつきたかったのかな?」
ここで、「国を一つにまとめるために、強いリーダーの物語が必要だった」「みんなが同じ物語を信じることで、仲間意識が生まれた」という、神話の社会的機能に気づかせます。
4. まとめ(5分):物語を受け継ぐ意味
先生:「神武天皇が本当にいたかどうか、それはタイムマシンがないと分かりません。でも、1300年以上前の人たちが『自分たちの国はこうやって始まったんだ』と信じて書いた本が、今も残っている。その物語を私たちが知っていること自体が、歴史がつながっている証拠なんだよ」
【授業案3:討論・道徳】「建国記念日」と「建国記念の日」の違い(道徳・学活)

「の」の一文字に込められた深い意味(法的定義)を考える活動です。日本語の微妙なニュアンスを理解できる高学年だからこそできる授業です。
指導案の流れ(45分)
1. 導入(5分):「の」のミステリー 黒板に大きく「建国記念日」と書き、×印をつけます。
先生:「カレンダーを見てごらん。この書き方は間違いです。正しくは何でしょう?」 児童:「『の』が入ってる! 『建国記念の日』だ!」 先生:「正解。たった一文字の『の』。これには、大人たちの深い議論と、ある願いが込められています。今日はこの謎を解き明かそう」
2. 展開(15分):戦前と戦後の歴史 少し難しい歴史背景を、噛み砕いて説明します。
先生:「昔(戦前)は『紀元節(きげんせつ)』と呼ばれていて、神武天皇の即位を盛大にお祝いしていました。でも、戦争に負けた後、一度この祝日は廃止されてしまったんです」 先生:「『神話を信じ込ませて、戦争に向かわせた反省』があったからです。でも、国民から『やっぱり国ができた日をお祝いしたい』という声がたくさん上がって、復活することになりました」 先生:「その時、議論になったのが、**『神話の日付をそのまま使っていいのか?』**ということでした」
3. 【主活動】(20分):「『の』に込められた願いを考えよう」 以下の2つの定義を板書し、違いを考えさせます。
先生:「もし、神武天皇の話が作り話だったとしたら、2月11日は嘘の日付になってしまう。それはおかしいよね? という意見がありました」 先生:「そこで、『の』を入れることで意味を少し変えたんです。どういう意味になったと思う?」
グループで話し合わせた後、解説します。
先生:「『の』を入れることで、『2月11日が絶対に正しい建国の日かは分からないけれど、日本という国ができて、今こうして続いていること自体をお祝いしよう』という意味にしたんです」先生:「法律(祝日法)にはこう書かれています。『建国をしのび、国を愛する心を養う』。日付よりも、みんなの心の中に『日本を大切に思う気持ち』を育ててほしい、という願いが込められているんだね」
4. まとめ(5分):平和な日本への感謝
先生:「たった一文字の『の』には、戦争の反省や、未来の平和への願いが詰まっていました。2月11日は、正確な日付にこだわる日ではなく、『日本という平和な国に生まれてよかったな』と、今の生活に感謝する日にしてください」
先生が高学年児童から受ける「鋭い質問」Q&A

高学年の児童は、大人がドキッとするような本質的な質問を投げかけてくることがあります。 ごまかさず、誠実に、かつ教育的な配慮を持って答えるための回答例です。
Q1:「神武天皇は120歳以上まで生きたって本に書いてあったけど、嘘でしょ?」
【回答例】 「今の常識や科学で考えると、人間が120歳まで生きるのは不可能に近いから、不思議だよね。これにはいくつかの説があるよ」
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暦(カレンダー)が違った説: 昔の1年は今の半年分だったという説があり、それで計算すると今の60歳くらいになるんだよ。
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尊敬の気持ち説: 昔の人は、偉大な人物や神様に近い人を『長く生きた』と表現することで、その偉大さを伝えようとしたんだ。数字そのものよりも、昔の人の『すごい人だったんだぞ』という気持ちが表れているのかもしれないね。
Q2:「紀元節は悪い日だったの? なぜ廃止されたの?」
【回答例】 「『紀元節』という日そのものが悪いわけではないよ。ただ、戦争中の日本では、この日を使って『天皇陛下のために命を捨てなさい』とか『日本は神の国だから絶対に負けない』という教育を強くしすぎてしまったんだ」
「その反省から、戦争が終わった後、『一度リセットしよう』ということになったんだね。今の『建国記念の日』は、戦争のためではなく、純粋に『私たちの国を大切にしよう』という平和な願いで復活した日なんだよ」
Q3:「日本はいつできたの? 正解を教えて」
【回答例】 「それがね、『分からない』というのが正解なんだよ。そして、それが日本のすごいところなんだ」
「例えば、君の家におじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんの…とずっと前の先祖がいつ家を建てたか、正確な記録がないとするよね。でも、今ここに君の家がある。それは、『いつ建てたか分からないくらい、ずっと昔から続いている』という証拠だよね」 「日本も同じで、記録がないくらい大昔から、一度も途切れることなく続いている。だから『○月○日にできました』という契約書がないんだよ」
まとめ:高学年だからこそ「曖昧さ」を学ぶチャンス

高学年の子どもたちにとって、建国記念の日は「白黒はっきりしない日」に見えるかもしれません。 しかし、世の中には科学や数字だけでは割り切れない「歴史」や「文化」「心」があることを学ぶ、絶好の機会でもあります。
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世界との比較で、日本の独自性を知る。
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歴史の考察で、神話の役割を知る。
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言葉の定義で、先人の願いを知る。
これらの指導案を通して、子どもたちが「日本は不思議で面白い国だな」「昔の人たちの思いが今につながっているんだな」と、少し大人びた視点で自国を見つめ直すきっかけを作ってあげてください。
歴史の事実は一つかもしれませんが、それをどう解釈し、どう未来につなげていくかは、私たち一人ひとりの心に委ねられています。そんな深い学びができるのが、高学年における建国記念の日の授業なのです。
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