
こんにちは。晴田そわかです。
今回の記事では《小学生(低学年)に「人権とは?」をどう教える?教師向け・わかりやすい説明のコツ》について紹介させて頂きます。
小学生(低学年)に「人権とは?」をどう教える?教師向け・わかりやすい説明のコツ
小学校の教壇に立つ先生方、毎日の授業や学級経営、本当にお疲れ様です。教育現場において「人権教育」は極めて重要なテーマとして位置づけられていますが、いざ小学校低学年の子どもたちに向けて授業を行うとなると、どのように伝えればよいのか頭を抱えてしまう先生も多いのではないでしょうか。
「人権とは?」という言葉はあまりにも抽象的で、大人であっても一言で過不足なく説明するのは難しい概念です。ましてや、まだ語彙力も人生経験も少ない小学1年生や2年生の子どもたちに対して、「基本的人権」や「法の下の平等」「生存権」といった難しい言葉を並べ立てても、ポカンとされてしまうのがオチでしょう。低学年の子どもたちには、彼らの生活圏内にある身近な出来事と結びつけて説明しなければ、心には響きません。
この記事では、小学校低学年の子どもたちに「人権とは何か」をどのように教えればよいのか、そのわかりやすい説明のコツや、具体的な言葉がけについて徹底的に解説していきます。毎日の学級経営の中で生かせる具体的なヒントをたくさん詰め込みましたので、ぜひ明日からの教室で実践してみてください。私の教員時代の経験や、当ブログでこれまで集めてきた多くの実践事例をもとに、先生方の授業準備の負担を少しでも減らし、子どもたちの心に真っ直ぐ届く指導の一助となれば幸いです。
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1. 小学校低学年にとっての「人権」とは?

低学年の子どもたちに人権教育を行う際、指導者である先生にとって最も大切なステップは「言葉の変換」です。文部科学省の指導要領や大人向けに書かれた専門書の内容を、そのまま教室に持ち込むことはできません。まずは、先生ご自身の中で「低学年にとっての人権とは、具体的にどのような行動や心を指すのか」を明確に定義しておく必要があります。
難しい言葉は使わない!人権=「自分も友達も大切にすること」
小学校低学年の子どもたちに「人権ってなに?」と聞かれたら、最もシンプルで、かつ的確な答えは「自分も、周りのお友達も、みんなが『大切にされる』ということだよ」という説明です。人権という漢字は「人の権利」と書きますが、この「権利(自分の利益を主張できる資格)」という概念を低学年で正確に理解させるのは至難の業です。
ですから、「みんなが毎日笑顔で、安心して学校に来られるようにするための、とても大切なルール」や「生きている人みんなが持っている、優しくされるための見えないパワー」といった言葉に置き換えてみましょう。例えば、「朝起きて、ご飯を食べて、学校で楽しく遊んで、夜はぐっすり眠る。怪我をしたら病院でお手当てをしてもらえる。これが当たり前のようにできるのは、みんなに『人権』という、大切にされるパワーがあるからなんだよ」と説明すると、子どもたちは自分たちの日常の生活と結びつけて想像しやすくなります。
まずは「自分は大切にされている存在なんだ」という自己肯定感(受動的な感覚)から入り、次に「だから、同じパワーを持っているお友達のことも大切にしなきゃいけないんだよ」と、他者への思いやりへと繋げていくステップが非常に効果的です。
発達段階に合わせた目標設定
小学校低学年(1〜2年生)という時期は、幼児期特有の「自分中心の世界(自己中心性)」から、少しずつ「他者との関わり合いの世界」へと足を踏み入れる過渡期にあります。そのため、この時期の人権教育の目標は、決して高すぎるものを設定する必要はありません。社会課題や国際的な人権問題に触れるのは高学年になってからで十分です。
第一の目標は「自分の気持ちに気づき、それを言葉で表現できること」です。「私はこれが好き」「僕はこう言われて悲しかった」「先生、今イライラしているよ」といった、自分の内なる感情を言語化できることは、他者の気持ちを理解するための重要な土台となります。
第二の目標は「自分とお友達は違う人間であり、違う気持ちを持っていることに気づくこと」です。「自分が楽しいからといって、隣の席の子も楽しいとは限らない」「自分が面白いと思った遊びでも、相手は怖いと思っているかもしれない」という、ごく基本的な他者理解を促すことが、低学年における人権教育の最大のミッションと言えるでしょう。
2. 教室ですぐに使える!「人権」をわかりやすく伝える説明のコツと言葉がけ

概念的な説明や目標設定を終えたら、次はそれを具体的な日常の言葉がけに落とし込んでいきます。人権教育は、道徳や学活といった特別な時間だけに行うものではありません。先生の普段の声かけ一つひとつが、子どもたちの人権感覚を養う最高の教材となります。
「ちがい」を肯定する言葉がけ
人権の根底にあるのは、多様性の尊重です。低学年の教室では、ほんの些細な「ちがい」が、からかいやいじめ、仲間外れの種になることが頻繁にあります。足が速い子もいればゆっくりな子もいる。計算が得意な子、絵を描くのが好きな子、給食を食べるのに時間がかかる子、声が大きい子、恥ずかしがり屋な子。さまざまな個性を持った子どもがいる教室で、先生が率先して「ちがい」を肯定する姿勢を見せることが何よりも重要です。
例えば、図工の時間の作品発表で「〇〇さんの選んだ色は、誰も思いつかないような素敵な色だね」「△△くんの描いた形は、とても力強くてかっこいいよ」と、他の子とは違う個別の良さを具体的に褒めましょう。「みんなちがって、みんないい」という金子みすゞさんの有名なフレーズがありますが、これを単なるお題目ではなく、日々の承認として子どもたちにシャワーのように浴びせます。「自分は自分のままでいいんだ」という自己肯定感があってこそ、初めて「あの子はあの子のままでいいんだ」という他者肯定(=人権の尊重)が生まれるのです。
「自分がされて嫌なことはしない」から一歩踏み込む
人権教育や道徳の定番のフレーズとして、「自分がされて嫌なことは、お友達にもしてはいけません」という指導があります。もちろんこれは基本中の基本ですが、低学年の子どもたちには、さらに一歩踏み込んだ指導が必要です。なぜなら、子どもたちの間には「自分は叩かれても痛くない(嫌じゃない)から、相手にやってもいいと思った」「自分はあだ名で呼ばれるのが好きだから、相手にも変なあだ名をつけた」という、悪気のないトラブルが頻発するからです。
ここで先生が伝えるべきは、「自分がされて嫌なことと、お友達がされて嫌なことは、違うことがある」という事実です。「〇〇くんはプロレスごっこが好きかもしれないけれど、△△くんは乱暴な遊びが苦手で嫌だったんだね。人によって『嫌なこと』や『悲しいこと』は違うから、相手の顔をよく見たり、『やめて』と言われたらすぐにやめたりすることが、人権を大切にするということだよ」と具体的に説明します。
同時に、「自分がされて嬉しいことを、お友達にもしてあげよう」というポジティブな行動への変換も促しましょう。「嫌なことをしない」という禁止事項ばかりを並べるのではなく、「親切にする」「困っていたら助ける」「元気に挨拶をする」といった温かい行動を推奨することで、教室全体の空気がぐっと良くなります。
チクチク言葉とふわふわ言葉の活用
低学年の教室で非常に効果的で、多くの先生方が実践しているのが「チクチク言葉」と「ふわふわ言葉」という視覚的・感覚的なアプローチです。言葉には目に見えない大きな力があり、それが人の心を鋭く傷つけたり、逆に温かく癒やしたりすることを、感覚的に教える手法です。
- チクチク言葉:「バカ」「きもい」「あっちいけ」「へたくそ」など、言われた人の心にトゲが刺さって血が出てしまうような言葉。
- ふわふわ言葉:「ありがとう」「すごいね」「一緒に遊ぼう」「大丈夫?」など、言われた人の心が綿あめのように温かくなる言葉。
画用紙にトゲトゲのマークと、雲のようなフワフワのマークを描き、黒板に貼ります。そして子どもたちと一緒に「どんな言葉があるかな?」と出し合うワークショップ形式の授業は、1年生でも非常に盛り上がりますし、理解も深まります。日常のトラブルが起きた際も、「今の言葉は、〇〇さんの心にチクチク刺さってしまったね。どう言い換えればフワフワになるかな?」と問いかけることで、頭ごなしに怒るのではなく、子ども自身に言葉の選び方を考えさせることができます。これは、まさに言葉を使った人権の守り方の実践です。
3. 日常のトラブルを「人権学習」に変えるアプローチ

学校生活において、子ども同士の喧嘩やトラブルを完全にゼロにすることは不可能ですし、成長の過程において必要な摩擦でもあります。しかし、視点を変えれば、トラブルが起きたその瞬間こそが、最も生きた人権学習のチャンスでもあります。先生の介入の仕方次第で、子どもたちの人権感覚は大きく成長します。
けんかが起きたときの対応
低学年のけんかは、ささいな行き違いや、おもちゃ・遊具の取り合い、順番の横入りなどから発展することがほとんどです。手を出してしまったり、暴言を吐いてしまったりすることもあります。ここで先生が「けんか両成敗だから握手しなさい」「手を出したあなたが絶対に悪いから謝りなさい」と無理やり終わらせてしまうと、子どもたちの心には不完全燃焼なモヤモヤだけが残り、人権感覚は育ちません。
大切なのは、どちらの言い分も頭から否定せずに、最後までしっかりと聞くことです。「手を出してしまったのは良くなかったね。でも、どうして叩いてしまったのかな?何が嫌だったのかな?」と、行動の裏にある感情をすくい上げます。「先生は、あなたの気持ちも、相手の気持ちも、両方とも大切にしたいと思っているよ」という姿勢を見せること自体が、子どもへの最大の人権保障となります。双方が「自分の悔しい気持ちを先生に受け止めてもらえた」と感じて初めて、心に余裕ができ、相手の痛み(叩かれた痛み、暴言を吐かれた悲しみ)に寄り添い、反省する余裕が生まれるのです。
「仲間外れ」の芽を摘む
低学年の休み時間によく見られる「いーれーて」「だーめ」というやり取り。これは、いじめや仲間外れといった深刻な人権侵害の入り口になり得る重要なサインです。しかし、遊んでいる側(断る側)にも「今は親友と二人だけで内緒話をしたかった」「鬼ごっこのルールが崩れるから嫌だった」という彼らなりの理由が存在します。
ここで頭ごなしに「仲間外れはダメです!みんなで遊びなさい!」と怒り、無理やり輪に入れさせるのは、かえって人間関係をこじらせる原因になります。教室のルールとして「誰もが寂しい思いをしない空間づくり」を共有することが大切です。「『だめ』と強く言われたら、どんな気持ちになるかな?」と想像させると同時に、「もし後から来た子を入れるのが難しいときは、『ごめんね、今は二人で遊んでるから、昼休みになったら一緒に遊ぼう』『次のゲームからならいいよ』と、理由を優しく説明してあげようね」と、具体的な断り方や代替案の出し方のスキルを教えることも、お互いの立場を尊重する立派な人権教育です。
4. 授業への導入におすすめ!低学年の心を育む絵本・教材

人権というテーマを言葉だけで延々と説明するよりも、物語の力を借りることで、子どもたちの理解は飛躍的に深まります。道徳の時間や、朝の読み聞かせの時間を有効に活用し、子どもたちの心を揺さぶる教材を取り入れましょう。
共感性を高める絵本の選び方
人権をテーマにした絵本を選ぶ際は、「かわいそう」という一方的な同情を誘う悲しい物語よりも、多様性を明るく肯定するものや、登場人物の心の機微、葛藤が丁寧に描かれているものがおすすめです。
例えば、「わたしのせいじゃない」(作:レイフ・クリスチャンソン)という絵本は、いじめや集団心理、責任について、低学年でも深く考えさせられる名作です。ページをめくるごとに「僕は見てただけ」「あの子が変だから」と言い訳をする子どもたちが登場し、最後に読者に重い問いを投げかけます。また、「ええところ」(作:くすのきしげのり)は、自分の良いところが見つからなくて落ち込む主人公が、友達に自分の良さ(ええところ)を見つけてもらうことで自信を持ち、さらに他者の良さにも気づいていく温かい物語で、自尊感情や他者肯定感を育むのにぴったりです。
絵本を読んだ後は、ただ「良いお話だったね」で終わらせず、「自分だったらどうする?」「このとき、主人公はどんな気持ちで泣いていたと思う?」と問いかけ、子どもたちに自分の言葉で表現させる時間を必ず設けましょう。
「わたしのせいじゃない」(作:レイフ・クリスチャンソン)👇
「ええところ」(作:くすのきしげのり)👇
ロールプレイを取り入れたミニ活動
絵本や道徳の教科書から発展させて、教室で簡単なロールプレイ(役割演技)を行うのも非常に効果的です。例えば、「消しゴムを忘れて困っている友達がいたら、あなたはどう声をかける?」「友達が落とした給食を笑っている人がいたら、あなたはどうする?」といった、学校生活でありそうな具体的なシチュエーションを提示します。
実際に教室の前に出て、劇のように演じてみることで、子どもたちは当事者の気持ちをよりリアルに想像することができます。また、正しい行動を「頭で知っている」状態から、「実際の場面で実行できる」状態へとステップアップするための素晴らしい練習になります。もし子どもが間違った対応や冷たい対応を演じても決して怒らず、「それも一つの行動だね。でも、そう言われた相手はどう感じるかな?もっとみんなが笑顔になる方法はあるかな?」と、クラス全員で一緒に最適解を探していくプロセスを大切にしてください。
5. まとめ:毎日の学級経営が最高の人権教育

ここまで、小学校低学年の子どもたちに向けた「人権」の教え方や、具体的な言葉がけのコツについて詳しく解説してきました。「人権とは?」という問いに対して、難しい専門用語や法律の言葉を並べる必要はありません。「自分も、そして周りの友達も、みんなが大切にされるための大切なルール」であり、それを「思いやり」や「優しいふわふわ言葉」「ちがいの肯定」という具体的な行動に落とし込んでいくことが、低学年における人権教育の核心です。
そして何よりも重要なのは、特別な授業の時間だけでなく、先生ご自身が毎日子どもたちと接する態度そのものです。先生が特定の子どもを贔屓したり、失敗した子どもを感情的にみんなの前で怒鳴りつけたりしていては、いくら口で立派な人権の授業を行っても、子どもたちの心には微塵も響きません。子どもたちは大人の背中をよく見ています。「力のある者が、力のない者を怒鳴りつけて従わせてもいいんだ」という、人権とは真逆の強烈なメッセージ(隠れたカリキュラム)を学んでしまいます。
先生が一人ひとりのお子さんを名前で丁寧に呼び、目線を合わせてしっかりと話を聴き、「ちがい」を肯定して笑顔で接する。失敗しても「次からどうすればいいか考えよう」と伴走する。その温かく安心できる学級経営の土台の上にこそ、子どもたちの豊かな人権感覚は真っ直ぐに育っていきます。
毎日、予想外のトラブルを起こす元気いっぱいの低学年の子どもたち。彼らと正面から向き合い、時に翻弄される先生方の日々は、決して平坦なものではないと思います。しかし、先生が日々蒔き続ける「他者を思いやる心」の種は、必ず子どもたちの心の中で大きく根を張り、将来の豊かな社会を築く確かな礎となります。この記事が、日々の教室で奮闘される先生方の小さなヒントとなり、笑顔があふれる学級づくりの一助となれば、これほど嬉しいことはありません。明日からの教室で、ぜひ「ふわふわ言葉」があふれる温かい人権教育を実践してみてください。
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