
こんにちは。晴田そわかです。
今回の記事では《小学校中学年向け・水泳指導のコツ!「浮いて進む」感覚を掴むための基本メニュー》について紹介させて頂きます。
- 小学校中学年向け・水泳指導のコツ!「浮いて進む」感覚を掴むための基本メニュー
小学校中学年向け・水泳指導のコツ!「浮いて進む」感覚を掴むための基本メニュー
3年生、4年生を担任されている先生方、毎日の授業準備や学級経営、本当にお疲れ様です。水泳学習の季節が近づき、指導計画の作成を進められていることと思います。
小学校教員として現場に立っていた10年間、毎年この時期になると、中学年の水泳指導特有の難しさに直面し、指導法を模索したものです。中学年は、低学年までの「水遊び・水慣れ」から、高学年の「本格的な泳法の習得」へと移行する、非常に重要なターニングポイントです。この時期になると、すでにスイミングスクールに通っていて25メートルをクロールで泳ぎ切る児童がいる一方で、まだ水に顔をつけることすら極度に怖がる児童もおり、クラス内の「泳力差」が最も顕著に現れ始めます。
今回の記事では、クロールなどの本格的な泳法を教える前に、どんな泳力の児童であっても共通して身につけさせたい「浮いて進む」感覚を確実に定着させるための、スモールステップな基本メニューと指導のコツを詳しく解説します。特に、つまずきやすいポイントと具体的な声かけを豊富に盛り込みましたので、明日の授業のヒントとしてぜひご活用ください。
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1. なぜ中学年の水泳指導で「浮く」感覚の習得が最優先なのか?

泳ぐのが苦手な児童にとって、水泳学習における最大の壁は「手足の動かし方がわからないこと」ではなく、「沈むことへの恐怖心」と「それに伴う体の極度な力み」です。
人間の体は、肺に空気をしっかりと入れ、筋肉の緊張を解けば自然と水に浮くようにできています。しかし、水が怖い児童は無意識のうちに息を吐き出し、全身の筋肉をガチガチに硬直させてしまいます。筋肉が硬直すると比重が重くなり、結果として水に沈んでしまうのです。この恐怖心を取り除かないまま、いきなり腕の回し方やバタ足の技術を教えても、パニック状態の頭と体では決して吸収することはできません。
技術指導を急ぐ気持ちをグッとこらえ、まずは「水に身を任せれば自然に浮くんだ」という安心感を持たせることが、すべての土台になります。この土台さえ固まれば、その後の技術指導は驚くほどスムーズに進みます。
2. ステップ①:体の力みを取り除く「浮く」基本メニュー

まずは、自分の体が水に浮くという事実を体感し、リラックスする感覚を養うための基本メニューです。ここでは3つの段階に分けて指導します。
自分の浮力を知る「だるま浮き」
だるま浮きは、浮力の感覚を掴むための最初の一歩です。息を大きく吸い込み、水の中で両膝を両手でしっかりと抱え込んで、だるまのように丸くなります。
ここで沈んでしまう児童は、水への恐怖から息を吐き出してしまっているか、丸まる姿勢が不十分です。「肺を大きな風船にするよ。息をいーっぱい吸って、止めたままお水に入ろうね」と具体的に伝えます。最初は3秒浮くことを目標にし、「1、2、3、パッ!」と教員がリズミカルに声をかけ、短い時間で成功体験を積ませることが重要です。
究極のリラックスを体感する「クラゲ浮き」と「大の字浮き」
だるま浮きで浮力が確認できたら、次は「クラゲ浮き」と「大の字浮き(ヒトデ浮き)」へ展開します。クラゲ浮きは、だるま浮きの状態から手足をダラリと下に向けて伸ばすメニューです。体の力を完全に抜くことが最大のポイントとなります。
さらにリラックスできたら、水面に仰向け、またはうつ伏せになり、手足を大きく広げて大の字になります。仰向けの大の字浮き(背浮き)は、耳が水に浸かるため極端に怖がる児童がいます。無理強いは絶対にせず、教員が頭の後ろにそっと手を添え、「先生が支えているから絶対に沈まないよ。空の雲を見てごらん」と安心感を与えながら、少しずつ手を離していくアプローチが有効です。
楽しみながら安心感を生む「ペアで引っ張り浮き」
水に浮く感覚に楽しさをプラスするのが「ペアで引っ張り浮き」です。バディ(2人1組)になり、一人が浮く役、もう一人が引っ張る役になります。浮く役の児童はうつ伏せで手足を伸ばし、引っ張る役の児童はその両手を持って、ゆっくりと後ろ歩きで進みます。
引っ張る側には「お友達が怖がらないように、ゆっくり優しく歩くこと」を徹底させます。浮いている側は、自分で動かなくても水面をスーッと滑っていく感覚を味わうことができ、これが次の「けのび」への強烈なイメージトレーニングとなります。
3. ステップ②:水の抵抗を極限まで減らす「けのび」の徹底指導

水に浮くことに慣れたら、次は「浮きながら前に進む」ための基本姿勢である「けのび」の練習です。けのびの姿勢(ストリームライン)が美しく真っ直ぐに保てていなければ、その後にどんなに強く腕を回しても、水の抵抗を正面から受けてしまい前に進みません。
陸上で作る完璧な「ロケットの姿勢」のコツ
まずは水に入る前、あるいは浅いところで立ったまま、けのびの姿勢を作らせます。子どもたちには「一番細くて尖ったロケットに変身するよ」と伝えます。
- 両手を頭の上でピンと伸ばし、手のひらを重ね合わせます。
- 腕で両耳をギュッと挟み込むようにします。耳が見えている状態だと、後で水に入った時に必ず頭が上がってしまいます。
- お腹とお尻に力を入れ、指の先から足の先まで一本の硬い棒になるように意識させます。
水中での「壁けり」と目線の重要性
陸上で姿勢が作れたら、水中で壁を蹴って進む練習をします。プールの底に足をついて壁を背にして立ち、片足を壁の少し高い位置に当てます。体を水に沈めながら両腕を前に伸ばし、先ほどのロケットのポーズを作ってから壁を力強く蹴ります。
壁を蹴った直後に、顔が前(進行方向)を向いてしまい、足がすぐに沈んでしまう児童が非常に多くいます。人間の体は、頭が上がると連動して腰が沈む構造になっています。けのびの最中は「プールの底(自分のおへそ)を見る」ことを徹底させてください。「前を見なくても壁にはぶつからないから大丈夫だよ」と安心させることが大切です。
バタ足なし!「けのび滑空競争」で姿勢を固める
姿勢が安定してきたら、「バタ足を一切使わずに、けのびだけでどこまで進めるか」を競うゲームを取り入れます。足を動かしてはいけないというルールにすることで、児童は自然と「どうすれば水の抵抗を減らせるか」「どうすれば足が沈まないか」を工夫するようになります。美しいストリームラインを維持する体幹の使い方が、この遊びを通して自然と身につきます。
4. ステップ③:姿勢を崩さず推進力を生み出す正しい「バタ足」

美しいけのびで水の抵抗を減らすことができたら、最後は推進力を生み出す「バタ足」の指導へと進みます。中学年のバタ足指導で最も直さなければならないのが、膝を深く曲げて水面をバシャバシャと叩く「自転車こぎ」になってしまうことです。
ありがちな「自転車こぎ」を防ぐ腰かけキック
まずはプールサイドに腰掛け、足を水に出した状態でキックの練習をします。ここでバタ足の正しい動きのイメージを脳と筋肉に刷り込みます。
- 足首は力を抜き、足の甲を真っ直ぐ伸ばします。(足首が直角に曲がっていると水を後方へ押し出せません)
- 膝を曲げて蹴るのではなく、「太ももの付け根(股関節)から足全体を動かす」ことを強調します。
- 水面を叩き割るのではなく、水の中の水を優しく蹴り上げるイメージを持たせます。
壁につかまっての「伏し浮きバタ足」
次は水に入り、プールの壁の溝を両手でつかんだ状態でバタ足の練習をします。顔は水につけ、先ほどのけのびの時と同じようにプールの底を見るようにします。ここで教員はプールサイドから一人ひとりの足の動きをチェックします。
膝が曲がりすぎている児童には、「足をまっすぐ棒にしてごらん」「太ももから動かして!」と具体的な部位を指摘して修正していきます。正しいバタ足ができていると、大きな水柱ではなく、足の甲から足首にかけて細かく白く泡立つような水しぶきが上がります。
ビート板を使った「顔つけバタ足」への展開
壁キックでフォームが固まってきたら、ビート板を持たせて実際に前に進んでみます。ビート板の真ん中あたりを両手で軽く持ち、腕を伸ばして顔を水につけます。ビート板を使うと上半身が浮くため、安心感からか足の動きが雑になりがちです。「壁で練習した時と同じように、太ももから動かすよ!」と繰り返し声をかけ、フォームが崩れないように見守ります。息継ぎができない児童には、苦しくなったらその場で立って良いと伝えておきましょう。
5. 泳力差の大きい中学年クラスをまとめる指導の工夫

これらの基本メニューをクラス全体で進める中で、教員が心がけるべき指導の工夫が2つあります。
スモールステップでの目標設定と声かけ
泳げる児童がスイスイと進んでいく中で、苦手な児童は劣等感を抱きやすくなります。「顔が水につけられた」「だるま浮きで3秒浮けた」「バタ足の水しぶきが細かくなった」など、その児童なりの小さな成長を教員が確実に見つけ、全体の前で認めて褒めることが大切です。比較対象は他の児童ではなく、「昨日のその子自身」であることを強調します。
コース分けを見据えた実態把握
今回ご紹介した「浮く・けのび・バタ足」の基本メニューは、児童の現在の泳力を正確に把握するための絶好の機会でもあります。このメニューを通して、「しっかり浮いてバタ足で進めるグループ」と「まだ顔つけや浮くことに抵抗があるグループ」を見極めます。次回以降の授業で、この実態をもとに「基礎からじっくりコース」や「クロール挑戦コース」といった習熟度別のグループ学習へスムーズに移行するための重要な判断材料としてください。
まとめ:焦らず基礎を固めることが「できた!」への最短ルート

中学年の水泳指導は、技術的な指導が本格化する分、教員としても「早く泳げるようにさせなければ」と力が入ってしまいがちです。しかし、どれほど高度なクロールの腕の回し方も、すべては「リラックスして水に浮き、水の抵抗を受けない正しい姿勢をとる」という基礎の上に成り立っています。
手足をバタバタと動かさせる前に、まずは「力を抜けば自然と浮く」という安心感をたっぷりと味わわせ、美しいけのびの姿勢を作ることにしっかりと時間をかけてください。その基礎さえブレなければ、その後の上達スピードは見違えるほど速くなります。
一人ひとりの小さな「できた!」という喜びを見逃さず、ぜひ先生ご自身も児童と一緒に水泳の授業を楽しんでいただければと思います。安全で実りある素晴らしい水泳学習になるよう、心から応援しております。
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