
こんにちは。晴田そわかです。
今回の記事では《【小学校中学年向け水泳指導法】バタ足からクロールへ!手足がバラバラになる子どもへの段階別アプローチ》について紹介させて頂きます。
【小学校中学年向け水泳指導法】バタ足からクロールへ!手足がバラバラになる子どもへの段階別アプローチ
小学校も中学年(3年生・4年生)になると、体育のプールの授業は「水遊び」や「水慣れ」といった段階から、いよいよ本格的な「水泳(クロールなどの泳法)」へと大きくステップアップします。低学年の頃はけのびやバタ足で楽しく進めていた子どもたちも、この時期になると突然大きな壁にぶつかることが少なくありません。その壁こそが、「手と足を同時に動かすクロールの難しさ」です。
元小学校教員として10年間、数多くの体育の授業を受け持ってきた中で、この「バタ足からクロールへの移行期」に苦戦する子どもたちの姿を本当によく見てきました。バタ足だけなら綺麗に進む。腕の動かし方(ストローク)だけなら陸上で上手にできる。それなのに、いざ水の中で両方を一緒にやろうとすると、突然動きがぎこちなくなり、手足がバラバラになって沈んでしまうのです。
保護者の方や指導者としても、「足を止めないで!」「もっと手を大きく回して!」と声を張り上げたくなる場面ですが、子どもたちは決してふざけているわけでも、手を抜いているわけでもありません。頭では分かっていても、体が言うことを聞かないパニック状態に陥っているのです。
今回の記事では、クロールの練習で手足がバラバラになってしまう根本的な原因を解き明かし、子どもがパニックを起こさずにスムーズに泳げるようになるための「段階別アプローチ」を詳しく解説します。現場での指導経験を活かした、具体的な練習ステップや魔法の声かけフレーズもご紹介しますので、ぜひ家庭学習やプールでのサポートにお役立てください。
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なぜ手と足がバラバラになるの?中学年の子どもが直面する「3つの壁」

大人は無意識に手足を連動させて泳ぐことができますが、新しくクロールを習う子どもにとって、これは極めて高度な情報処理を伴う全身運動です。まずは、なぜ手と足の動きがバラバラになってしまうのか、そのメカニズムを正しく理解してあげることがサポートの第一歩となります。
クロールは、「一定のリズムでバタ足をし続ける」「左右交互に腕を回して水をかく」「タイミングよく横を向いて息を吸う」「水中で息を吐く」という、全く異なる複数の動作を同時に行わなければなりません。これは陸上の運動に例えるなら、右手でお腹を円状にさすりながら、左手で頭をトントンと叩くようなものです。中学年の子どもにとって、このマルチタスクは脳の処理能力のキャパシティを超えやすく、腕を回すことに意識を向けると、無意識のうちに足の動きがピタッと止まってしまうのです。
バタ足は体が真っ直ぐな状態で行うため安定していますが、腕を回す動作が加わると、肩が前後に動き、体が左右にローリング(回転)し始めます。この時、体幹(お腹や背中の筋肉)で姿勢を保つ力が弱いと、腕を回す勢いで腰まで一緒にねじれてしまい、足の向きがバラバラになって推進力を失います。結果として、水しぶきばかりが上がって前に進まない「溺れているようなフォーム」になってしまいます。
最大の関門が「息継ぎ」です。「水を飲んでしまうかもしれない」「息が続かない」という恐怖心があると、子どもは早く空気を吸おうとして、顔を水面から高く持ち上げてしまいます。頭が水面上に上がると、シーソーの原理で下半身は必ず深く沈み込みます。腰と足が沈んだ状態では、いくら手足を動かしても水の抵抗を真正面から受けてしまい、手足のリズムも完全に崩壊してしまいます。
いきなり泳がせない!まずは陸上で「連動」の感覚を掴む
水の中は浮力がある一方で、バランスを崩しやすい不安定な環境です。手足がバラバラになる子どもを水中でいきなり泳がせても、焦りと恐怖で悪い癖が定着するだけです。まずは水の抵抗も息継ぎの心配もない「陸上」で、脳と筋肉を連動させる練習から始めましょう。
陸上でのシミュレーション練習法
- 立ったままクロール体操:
その場で「1、2、1、2」とリズミカルに足踏みをします。足踏みのリズムを止めないまま、両腕を交互に大きく回す練習をします。腕を回すことに気を取られて足踏みが止まったり、リズムが狂ったりしないかを確認します。 - うつ伏せバタ足&ストローク:
床(またはベッドの上)にうつ伏せになります。足の甲を床につけたまま、太ももからバタ足の動きを繰り返します。足のリズムが安定したら、「右手を回して、左手を回して」と声をかけ、足の動きを止めずに腕を回すシミュレーションを行います。 - 鏡の前でフォーム確認:
洗面所などの鏡の前に立ち、前傾姿勢になって腕を回します。この時、腕が体の中心線(正中線)を越えてクロスしていないか、手がしっかりと太ももの横まで水を押し出せているかを視覚的に確認させます。
陸上で「足のリズムを崩さずに手を動かす」という感覚を脳に覚え込ませてからプールに向かうことで、水中でのパニックを大幅に減らすことができます。
水中での実践!「キャッチアップ」を取り入れた段階別アプローチ

陸上でのイメージトレーニングができたら、いよいよプールでの実践です。ここでは、手と足の動きをバラバラにさせないための最も効果的なドリルである「キャッチアップクロール」へと繋がるスモールステップをご紹介します。
ステップ1:ビート板を使った「片手回し」(呼吸なし)
いきなり両手を回すのではなく、まずは片手だけで「足と手の連動」に集中します。
- ビート板の下の方を両手で持ち、顔をつけてバタ足(けのびバタ足)でスタートします。
- バタ足のリズムが安定して進み始めたら、右手だけをビート板から離して、大きく1回水をかいて回します。
- 回した右手は再びビート板を掴み、元の姿勢に戻ります。
- 足が止まらないことを確認できたら、次は左手だけを離して回します。これを呼吸が続く範囲で繰り返します。
「足はモーターみたいにずっと動かしておこうね!おてては水の中の大きなボールを後ろに投げるイメージで回してみて。」
この段階では、息継ぎの動作は入れません。腕を回す瞬間にバタ足が止まっていないかだけを徹底的にチェックし、止まっていなければ大げさなほどに褒めてあげてください。
ステップ2:ビート板を使った「片手回し+息継ぎ」
片手回しに慣れたら、ここで初めて息継ぎの動作を組み込みます。
- ステップ1と同様に、ビート板を持ってバタ足でスタートします。
- 息継ぎをしたい側の手(例:右利きなら右手)で水をかき始めます。
- 手が太ももの横を通過するタイミングで、顔を横に向けて「パッ」と息を吸います。(この時、左手はビート板を持ったまままっすぐ伸ばしています)
- 腕が空中で前に戻ってくると同時に顔を水中に戻し、ビート板を掴みます。
「手が太ももにピタッとくっついたら、おへそを横に向けてお顔を出すよ!前を向かないで、プールの横の壁を見るのがコツだよ。」
ステップ3:ビート板なしの「キャッチアップクロール」
いよいよビート板を外します。「キャッチアップ(追いつく)」という名前の通り、前に出した両手が揃ってから次の手を動かす練習法で、手足のバラバラを防ぐ最高の特効薬です。
- ビート板を持たない状態で、両手を前に伸ばした「けのびバタ足」でスタートします。
- 右手をかいて回し、前に戻してきます。この時、左手は絶対に動かさず、前に伸ばしたまま待機させます。
- 右手が前で待っている左手に「タッチ」したら、初めて左手をかき始めます。
- 常にどちらかの手が前に残っている状態を作ることで、体が沈むのを防ぎ、バタ足のリズムを維持しやすくなります。
「前で両手が『こんにちは』って挨拶をしてから、反対のおててを出発させようね!スーパーマンみたいにまっすぐ伸びる時間を一瞬作るのがポイントだよ。」
多くの子どもは、手が前に戻ってくる前に逆の手を後ろに下げてしまう「風車のようなクロール」になりがちです。これでは常に頭や肩が沈んでしまいます。前に重心を残す「キャッチアップ」の感覚を掴むことで、驚くほどフォームが美しくなり、手と足の動きが整理されます。
よくある質問(Q&A)
クロールの練習中、保護者の方や指導者が直面しやすい疑問とその解決策をまとめました。
まとめ:焦りは禁物。一つひとつの動きを丁寧に繋ぎ合わせよう
バタ足からクロールへの移行は、子どもにとって陸上では経験したことのない「全身の複雑な連動」を求められる大きな試練です。手足がバラバラになってしまうのは、運動神経が悪いからではなく、真面目に一つひとつの動作(腕を回すこと、息継ぎをすること)に一生懸命取り組んでいる証拠でもあります。
早く25メートルを泳げるようになってほしいという親心から、つい「もっと足を動かして!」「前を見ない!」と沢山の指示を同時に出してしまいがちですが、マルチタスクに苦しんでいる子どもにとって、それは逆効果になってしまいます。
「今日はビート板で片手だけ回せればOK」「今日は息継ぎなしで、前で手を合わせるキャッチアップができれば100点」と、目標を小さく切り分けてあげることが成功の秘訣です。今回の記事でご紹介した段階別のアプローチと声かけを参考に、お子さんが「できた!」という喜びを感じながら、楽しくクロールを習得できるよう温かく見守ってあげてください。
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