
こんにちは。晴田そわかです。
今回の記事では《小学生への着衣泳指導の進め方 授業計画・安全管理・教え方のポイントを徹底解説》について紹介させて頂きます。
- 小学生への着衣泳指導の進め方
小学生への着衣泳指導の進め方
授業計画・安全管理・教え方のポイントを徹底解説
毎年夏になると、川や海での水難事故のニュースが後を絶ちません。警察庁の統計によると、水難事故の被害者の多くは「泳げる」とされていた人々です。いざというとき、衣服を着たままでも落ち着いて対応できる力を子どもたちに身につけさせる——それが着衣泳指導の本質です。
この記事では、元小学校教師として約10年の現場経験をもつ筆者が、着衣泳授業の計画から実施・振り返りまでを、実践的な視点で丁寧に解説します。指導に不安を感じている先生方の「明日から使えるヒント」になれば幸いです。
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着衣泳とは?指導の目的を正しく理解する

着衣泳の定義と通常の水泳との違い
着衣泳とは、衣服を着たまま水中に入り、水難事故時の自己保全技術を習得するための実践的な学習活動です。通常の水泳授業が「効率よく泳ぐ技術」を目指すのに対し、着衣泳は「生き残る技術」を目指します。
| 比較項目 | 通常の水泳 | 着衣泳 |
|---|---|---|
| 目的 | 泳力向上・体力育成 | 水難事故時の自己保全 |
| 服装 | 水着 | 衣服・靴を着用 |
| 重点技術 | クロール・平泳ぎなど | 背浮き・ラッコ浮き |
| 心理的要素 | 比較的少ない | パニック制御が重要 |
なぜ小学校で着衣泳を教えるのか
子どもの水難事故の多くは、川遊びや釣りなど日常のレジャー中に発生します。そのとき子どもが着ているのは当然「普段着」です。水着で泳げても、服を着たまま水に落ちたとき全く別の感覚が体を支配します——服の重さ、水の抵抗、息苦しさ。その感覚を事前に体験しておくことが、いざというときの「パニック防止」につながります。
着衣泳が広まった背景には、1999年の愛知県での川遊び中の小学生死亡事故をきっかけとした全国的な指導見直しがあります。それ以降、多くの自治体で「夏のプール授業の仕上げ」として着衣泳が実施されるようになりました。
学習指導要領における位置づけ
文部科学省の学習指導要領では、体育科・水泳領域において「水の事故防止に関わる心得」として着衣泳的な学習が位置づけられています。特に高学年では「溺れている人を見たときの対処法」「浮いて待つこと」の理解が求められており、各校の判断で年1回の実施が推奨されています。
着衣泳で身につけさせたい3つの力
むやみに泳ごうとせず、背浮きで体力を温存しながら救助を待てること。これが着衣泳の最大の目標です。
水に落ちたとき、まず何をすべきか。岸の距離、流れの速さ、近くに人がいるかを素早く判断する習慣をつける。
声を出して助けを求めること、手を振って自分の位置を知らせること。パニックのなかでもできるよう練習する。
授業実施前の準備と計画

実施時期・対象学年の決め方
一般的に着衣泳は、プール授業の最終週(7月中旬〜下旬)に実施するケースが多いです。夏休み前に「水の事故防止」の意識を高める絶好のタイミングです。
| 学年 | 指導のねらい | 主な活動内容 |
|---|---|---|
| 低学年1・2年 | 服を着たまま水に入る感覚を体験する | 水慣れ・浅いプールでの感覚体験 |
| 中学年3・4年 | 背浮き・ラッコ浮きの基本を習得する | 背浮き・ペットボトルを使った浮き |
| 高学年5・6年 | 総合的な自己保全技術を身につける | 背浮き・着衣のまま移動・仲間への声かけ |
授業計画(指導案)の立て方
45分授業の場合、以下の時間配分が目安になります。
| 時間 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 0〜10分 | 導入・安全説明 | 水難事故の映像・事例紹介、本時のめあて確認 |
| 10〜15分 | 準備運動・入水 | 服着用のまま段階的に入水、感覚をつかむ |
| 15〜35分 | 実技練習 | 背浮き→ペットボトル浮き→移動練習 |
| 35〜40分 | グループ発表・確認 | 「浮いて待て」の確認、仲間の動きを見る |
| 40〜45分 | まとめ・振り返り | 本時の学びを言語化、ワークシート記入 |
必要な持ち物・保護者への連絡
着衣泳は通常と異なる服装で実施するため、保護者への事前連絡が必須です。配布物には以下の内容を含めましょう。
- 着衣泳の目的・実施日・時間
- 当日の服装:長袖・長ズボン(厚手でないもの)、運動靴(紐靴は解けにくいものを)
- 水着は水着袋に入れて持参(着衣泳後に着替えるため)
- タオルを余分に1枚持参(濡れた服をくるむため)
- 体調不良時の参加可否の判断基準
- 綿素材の厚手Tシャツは重くなりすぎるため避ける
- ジーンズは水を含むと極端に重くなるため不可
- 運動靴(スニーカー)は実際の事故時の状況に近い体験ができ推奨
- ポケットに物が入っていないか事前確認が必要
指導者・補助者の人員配置
着衣泳は通常の水泳授業よりも安全管理の難易度が上がります。子どもがパニックになりやすいため、監視の目を増やすことが重要です。理想的な体制は以下の通りです。
- 主指導者:1名(プールサイドから全体を把握)
- 水中補助者:1〜2名(水中で子どもをサポート)
- 監視員:1名(プールサイド全体を見渡せる位置)
- 学級担任が1名の場合は、教頭や他学年教員・スクールアシスタントへの協力依頼を
安全管理と事前確認事項

実施前の健康チェック・参加可否の判断基準
着衣泳は通常の水泳より体力を消耗します。以下に該当する児童は参加を見合わせることを保護者と事前に合意しておきましょう。
- 発熱・体調不良(37.5℃以上)がある
- 耳・目・皮膚に傷や炎症がある
- 水泳が医師から制限されている
- 前日から体調がすぐれない、睡眠不足の場合
- 著しい恐水症(水への強い恐怖)がある
プールサイドの安全確保
着衣泳では子どもが水を飲みやすく、溺水リスクが通常より高まります。以下の安全器具を実施前に必ず確認・配置しましょう。
- 救命浮輪:プールサイドの複数箇所に配置
- 救助ロープ(ビート板):すぐ手の届く場所に
- AED:設置場所と使用手順を全指導者で再確認
- 携帯電話またはトランシーバー:緊急連絡用に必携
- 水温・気温の確認:気温25℃・水温23℃以上を目安に実施
緊急時の対応マニュアルと連絡体制
万が一の溺水事故に備え、実施前に全指導者で役割分担を確認しておきます。「誰が水に飛び込むか」「誰が119番するか」「誰が校内に知らせるか」を明文化しておくことで、緊急時の混乱を防げます。
保護者・管理職への事前説明
着衣泳は通常の授業と異なる活動のため、実施前に管理職への報告と保護者へのお知らせは必須です。特に「なぜ服を着て水に入るのか」「どのような安全対策をとるか」を丁寧に伝えることで、理解と協力が得られます。
授業の進め方・教え方のポイント【実践編】

授業導入——「なぜやるのか」を腑に落とす
着衣泳の導入で最も大切なのは、子どもたちが「自分ごと」として捉えること。水難事故のニュース映像や統計を見せるだけでなく、「もし川に落ちたら?」と問いかけ、自分ならどう行動するかを考えさせることで動機づけが高まります。
また「溺れた人を助けようと飛び込んで自分も溺れる二次溺水」の事例は、特に高学年に伝えたい重要な知識です。「助けたい気持ちは正しいが、まず大人を呼ぶこと」を繰り返し確認しましょう。
段階的な練習メニュー
1
まずは浅い場所で服を着たまま立ち、水の重さや動きにくさを体感させます。「重い」「動きにくい」という感想を共有することで、全員が同じスタートラインに立てます。
2
仰向けになり、手足を軽く広げて水面に浮く「背浮き」を練習します。コツは「耳まで水に入れ、お腹を上に向けること」。最初は教師や補助者が背中に手を添えてサポートしましょう。目線は真上の空に向けます。
3
500mlまたは2Lのペットボトルを胸に抱えて背浮きをします。ペットボトルの空気が浮力を補助するため、背浮きが苦手な子でも体験できます。「身近なものが命を救う道具になる」という気づきも重要な学びです。
4
服を着たままで平泳ぎやゆっくりしたクロールを試みます。水の抵抗と服の重さを実感しながら「むやみに泳ごうとしないほうが良い」という判断力を育てます。
「浮いて待て」を体感させる指導の工夫
「浮いて待て」は着衣泳の最重要メッセージです。ただ言葉で教えるだけでなく、実際に1分間・2分間と時間を計りながら背浮きで浮いていられるかを試させます。最初はすぐに立ってしまう子も多いですが、繰り返すことで「意外と浮いていられる」という自信が生まれます。
- 「お空をじっと見て、顔だけ水の上に出していて」
- 「力を抜けば抜くほど浮くよ。ゆっくり深呼吸して」
- 「助けが来るまで浮いていればいい。泳がなくていい」
- 「耳が水に入っても大丈夫。それが正しい浮き方だよ」
子どもが怖がるときの対応法
着衣泳で最も起こりやすいトラブルが「パニック・泣き出す」です。無理に続けさせず、まずは安全な場所でそばに寄り添い、気持ちを聞くことが大切です。
- 「怖い」と言える子は正直で、それ自体を褒める
- 段階を落として「服を着たまま水に足だけ入れる」から始める
- 見学でも「見て学ぶ」という位置づけで参加させる
- 無理やり参加させることで水への恐怖が強化される逆効果を避ける
学年別の指導のポイント
| 学年 | 指導の重点 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 低学年(1・2年) | 楽しく水に慣れる・服が重いと知る | 恐怖心を与えない・補助を手厚く |
| 中学年(3・4年) | 背浮き・ペットボトル浮きの習得 | 正しいフォームより「浮ける感覚」優先 |
| 高学年(5・6年) | 状況判断・助けを求める行動 | 「助けに行かない判断」を明確に教える |
着衣泳指導でよくある疑問・トラブルQ&A
指導後の振り返りと評価

子どもへの学習振り返りシートの活用
着衣泳後に振り返りシートを記入させることで、学びの言語化と定着を促せます。記入項目の例は以下の通りです。
- 今日体験して「怖かったこと・驚いたこと」
- 「浮いて待て」ができそうかどうか(理由も)
- 水辺にいるとき、これから気をつけたいこと
- 家族に伝えたいこと
最後の「家族に伝えたいこと」は特に効果的です。子どもが親に話すことで、家庭での水難事故防止意識も高まる波及効果があります。
指導者自身の授業改善ポイント
実施後に以下のチェックリストで自己評価することで、翌年の授業改善に活かせます。
- 全員が「背浮き」を1回以上体験できたか
- パニックになった子への対応は適切だったか
- 監視体制は十分だったか(死角はなかったか)
- 時間配分は適切だったか(練習時間は確保できたか)
- 「浮いて待て」のメッセージは子どもに届いたか
翌年度につなげる記録の残し方
担任が変わっても着衣泳の質を維持するために、実施記録を残しておくことが重要です。記録には「実施日・天候・水温・気温・参加人数・内容・課題・改善点」を含め、学年の引き継ぎ資料に追加しておきましょう。
まとめ——着衣泳指導の核心
着衣泳は「泳ぎが上手くなる授業」ではなく、「命を守る判断力と技術を体験する授業」です。指導の核心はただひとつ——
「浮いて待て。助けが来るまで、体力を使わずに浮いていなさい。」
この一言を子どもたちの体と心に刻むことが、着衣泳指導の最大の目的です。
- 事前の準備と保護者連絡を丁寧に行う
- 安全管理体制を万全に整えてから実施する
- 段階的な練習で「怖さ」を「自信」に変える
- 振り返りで学びを言語化・定着させる
先生方の丁寧な指導が、子どもたちの大切な命を守る力につながります。ぜひ自信を持って着衣泳の授業に臨んでください。
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