こんにちは。晴田そわかです。
今回の記事では《小学生の徒競走指導法|低学年から伸ばす走りのコツと練習メニュー》について紹介させて頂きます。
- 1. 導入:徒競走指導に悩む先生方へ
- 2. 小学生徒競走の指導で大切にしたいこと
- 3. 低学年の走りの特徴とよくある課題
- 4. 基本のフォームと指導のコツ
- 5. 授業で使える練習メニュー(低学年向け)
- 6. 中学年・高学年へのつなげ方
- 7. よくある質問(Q&A)
- 8. まとめ:教師の声かけで走りは変わる
1. 導入:徒競走指導に悩む先生方へ
小学校の体育授業の中でも、徒競走は運動会や体力テストなど、子どもたちにとって特に注目度の高い種目です。ですが、いざ教える立場になると、
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「どう教えればいいのかわからない」
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「速くなる以前に、ちゃんと走れていない」
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「運動が苦手な子に配慮しながら指導するのが難しい」
そんな悩みを持つ先生も多いのではないでしょうか。特に低学年では、運動経験も浅く、体の使い方がまだ未熟なため、走るという単純な動きの中にも多くの課題があります。
本記事では、小学校低学年の子どもたちに向けた徒競走の基本指導法や、授業で使える具体的な練習メニューを、先生方向けにわかりやすくまとめました。「ちょっと走り方を教えるだけ」ではない、根本からの支援と成長のヒントをお届けします。
2. 小学生徒競走の指導で大切にしたいこと

まず大前提として、小学生にとって徒競走は「競争」ではありますが、それ以上に楽しさと達成感を味わえる運動であるべきです。
特に低学年では、体の成長差が大きく、もともと速い子・遅い子の差が目立ちます。「勝ち負け」ばかりを意識させると、運動が苦手な子はすぐに自信を失ってしまいます。
だからこそ、徒競走の指導では次の3点が重要になります。
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楽しさのある運動で「またやりたい!」と思わせること
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個々の成長に注目して「自分なりに上達した」を実感させること
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走る動作の基本を、段階を追って丁寧に教えること
中でも「フォームの習得」は、低学年のうちから意識して取り組むことで、将来的な走力アップにつながります。指導者がちょっとしたコツを知っているだけで、子どもたちの走りは大きく変わっていきます。
3. 低学年の走りの特徴とよくある課題

低学年の子どもたちの走りを見ていると、「どこから教えればいいのかわからない」と感じる場面も多いですよね。そんなときは、まず走りの特徴を理解することが指導の第一歩になります。
主な特徴と課題は次の通りです:
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腕をうまく振れていない:ただ腕をぶらぶらさせていたり、体の前で振ってしまったりする。
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足の運びが不安定:地面を蹴るというより、「バタバタと足を前に出している」印象。
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スタートが遅い:構え方が曖昧で、合図を聞いてから動き出すのに時間がかかる。
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走るのが長続きしない:最後まで走りきれず、途中でスピードが落ちてしまう。
これらの多くは、運動能力の問題というより、体の動かし方を知らないことが原因です。正しいフォームを意識させ、少しずつ繰り返すことで、子どもたちの走りは驚くほど整っていきます。
4. 基本のフォームと指導のコツ

では、実際にどんなフォームを目指せばいいのか。教師が押さえておきたい徒競走の「走りの基本フォーム」は、次の4点です。
【基本フォームのポイント】
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姿勢:背筋を伸ばし、やや前傾姿勢になる(猫背や反り腰に注意)
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腕振り:肘を約90度に曲げて、体の横で後ろへしっかり引く
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足の運び:かかとではなく、つま先で地面を押すように意識する
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視線:前方を見る(足元を見ない)、頭を上下に揺らさない
【指導のコツ】
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その場ダッシュで腕振りを確認:「その場で10秒走ってみよう」→「先生と同じように腕が振れているかな?」
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スタート時の足の位置を印:「このマークに右足を置こうね」など視覚的に伝える
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フォームに注目させる声かけ:「今の走り、腕がしっかり振れていたね!」と具体的に褒める
特に低学年では、全体に伝えるだけでなく、一人ひとりに短く声をかけて、感覚的に理解させることが大切です。正解を押しつけるのではなく、「できた!」という実感を積み重ねていくことが上達の近道です。
5. 授業で使える練習メニュー(低学年向け)

低学年では、ただ「走る」だけではすぐに飽きてしまう子も多いもの。走りの基本を身につけるためには、遊びの要素を取り入れた練習メニューがおすすめです。ここでは、授業内で簡単に取り組める内容を紹介します。
① 「その場ダッシュ&ストップ」
【目的】腕の振り方や姿勢の確認
【やり方】
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先生の合図(「よーい…ドン!」)で、その場で全力ダッシュ。
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「ピッ!」の笛でピタッと止まる。
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止まったときに腕の位置や姿勢を確認。
【ポイント】
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腕が体の横で振れているか、姿勢が前傾になっているかを見る。
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ストップのタイミングで子どもたちに「今の腕の位置はどこ?」と問いかけて気づかせる。
② 「フォームかけっこ」
【目的】腕振りと足運びを意識した走りの習得
【やり方】
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10m程度の直線を、腕を意識しながら走る。
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手は「グー」、肘を90度に曲げることをルールにする。
【ポイント】
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一斉に走らせるのではなく、2〜3人ずつ少人数で。
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終わったあと「○○さんの腕、かっこよかったね!」と具体的にフィードバック。
③ 「スタートの練習(よーいドンゲーム)」
【目的】スタートダッシュのタイミングと構えの習得
【やり方】
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「位置について、よーい…(間をおく)ドン!」で走り出す。
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「ドン」の前に出たらやり直し。
【ポイント】
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遊び感覚で、「うっかり早く出ちゃった子」は笑いに変えることで和やかに進める。
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合図に集中する練習にもなり、集中力の向上にもつながる。
④ 「ゾーン走」
【目的】速さを出す区間を意識して走る体験
【やり方】
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コース上にカラーコーンやマットなどで3つのゾーンを作る。
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ゆっくり走る
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全力で走る
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止まる
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「赤→青→緑の順に走ろう」など、ルールを出して取り組む。
【ポイント】
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体の使い方やスピードの切り替えを体験できる。
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フォームを崩さずスピードアップする感覚を育てる。
6. 中学年・高学年へのつなげ方

低学年で基本を身につけることは、中学年・高学年の発展的な走力向上にも直結します。フォームを固め、走ることに対してポジティブな経験を積んだ子は、その後の体育授業や部活動でも自信をもって取り組めるようになります。
【つなげる指導のポイント】
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継続的にフォーム確認を行う:「去年教わったこと、覚えてる?」と振り返る場面を意識的に入れる。
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記録の見える化:「前より速くなった!」を数字で実感させる。50mタイムを計るなどして成長を見せる。
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グループでの目標づくり:中学年以上では、チームで記録を伸ばす活動(リレー形式など)を取り入れ、協力や戦略性も育てる。
また、低学年から**「正しく走る」=「かっこいい」「楽しい」**というイメージをつけておくことが、継続的な運動習慣にもつながります。
7. よくある質問(Q&A)

ここでは、実際に現場の先生方からよくある疑問や不安について、具体的にお答えします。
Q1. 足の速さに差があるクラスで、どうやって公平に練習させる?
A. 比較ではなく「個の成長」を軸に指導しましょう。
徒競走は順位がつくため、どうしても「速い・遅い」の印象が残りがちですが、指導の場面では「前より腕がよく振れていたね」「スタートが安定してきたよ」と、自分比での成長に焦点を当てる声かけが有効です。
また、タイムを記録する活動では、「去年より何秒速くなったね!」と、過去の自分との比較を伝えると、どの子にもやる気の火がつきます。
Q2. 足が遅くて走るのが嫌いな子には、どう声をかければいい?
A. 「フォームをきれいにすること」など、別の視点で褒めてください。
「順位」や「タイム」以外にも評価できるポイントはたくさんあります。
例えば「走り方がきれいだった」「腕の振り方が前より良くなった」など、結果ではなく過程を認める声かけが、子どもの心を動かします。
走ること自体が嫌いになってしまわないように、「がんばっている姿勢」「チャレンジする気持ち」に注目して声をかけましょう。
Q3. よーいの姿勢を教えても、なかなか定着しません…
A. 毎回確認し、繰り返し行うことが大切です。
よーいの姿勢は、意識しないとすぐに元に戻ってしまいます。毎回の練習で「よーいの姿勢チェック!」のように、確認の時間を必ず入れることで、習慣化されていきます。
また、クラス全員の前で「○○さんの姿勢、すごく安定しているね!」と紹介すると、子どもたちの中に良いモデルが共有され、定着が早まります。
Q4. 雨の日など外で走れないときはどうする?
A. 室内でできるメニューに切り替えて、フォーム練習に集中!
体育館や教室内でもできる「その場ダッシュ」「姿勢キープ」「腕振り練習」などに取り組みましょう。
また、鏡やタブレットを使ってフォームを自分で確認する活動を行うと、意識づけに効果があります。
ただ走るのではなく、「どう走るか」に焦点を当てた練習ができる貴重な時間にもなります。
8. まとめ:教師の声かけで走りは変わる

徒競走の指導は、単に足が速くなることだけが目的ではありません。
**「チャレンジしてみよう」「走るのって気持ちいい!」**という前向きな気持ちを育てることが、何より大切です。
そのために必要なのが、教師の声かけです。
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結果だけでなく「がんばり」や「フォームの変化」を認める
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「一人ひとりの成長」を見逃さず、言葉にする
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子ども自身が自分の変化に気づけるよう導く
これらを意識するだけで、子どもたちは走ることへの自信を持ち、積極的に授業に参加するようになります。
とくに低学年のうちは、「走る楽しさ」を知ることが最優先。笑顔で走る子どもたちの姿を見ながら、将来につながる体の使い方を丁寧に伝えていきましょう。
徒競走の授業は、体育嫌いな子も運動の楽しさを知る入り口になります。先生のかかわり方ひとつで、子どもたちの意欲も変わります。
ぜひ、今日からの授業で、フォームと気持ちの両方を育てる徒競走指導を意識してみてください。
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